■ 2-10 ■ |
「っ、放せっ! 触るなっ!!」 亮は思いきり腕を振り、ライラックの顔を薙ぐと、渾身の力で上にのしかかる男の身体を蹴り上げる。 ライラックは鳩尾に食らった亮の蹴りに一旦身を引くと、頬に垂れる血の滴を腕でぬぐった。 ブルーグレーの絨毯の上に亮を押し倒したライラックだったが、思わぬ激しい抵抗に攻めあぐねている状況だ。 シャツのボタンが無惨に飛び散り、ズボンのファスナーも半開きにされた亮は、手負いの獣のようにいきり立っている。 亮は身体を起こしすぐに体勢を立て直すと、ぐいっと手で口の端をぬぐった。 先ほど殴られたとき、口の中を切ったらしい。 『こいつは楽しいな。こんなゲボ、初めてだ』 手負いの獣を追い詰めていく快感が、ライラックの中で心地よく膨れあがっていた。 武力局の局長を務めるこの男は、元々こういった荒事が好きなタチなのだ。 『しかし、時間は限られてる。そろそろ本番させてもらわないとな』 ライラックの言葉と同時に、亮の表情が強ばっていた。 何かが自分の身体に起こっている。 『――さすがに効きが悪いが、それでも……』 ライラックが力を込めると、亮の身体がガクンと床に崩れ落ちていた。 強烈な力が、上から亮にのし掛かってきたのだ。 ミシミシと床が軋んでいるのがわかった。 「――っ、な…に……?」 『あんまり抵抗しすぎると、おまえの身体じゃなく、この部屋がいかれちまうぜ?』 ゆっくりと近づいてきたライラックが、四つん這いで力の圧迫に耐えている亮の顔を上げさせる。 『ほら、ヴェルミリオにやってたのと同じようにしてみろよ』 既に半ば立ち上がり掛けている大きなモノを取り出すと、ライラックは亮の口元にそれを突きつける。 顔を背けようとする亮の髪をぐいと上からつかみ上げると、ライラックは強引に亮の口へそれをねじ込んでいた。 「んっ――、んんぅっ」 含みきれないほどの大きさに、亮は苦しげに眉を寄せる。 顔を背けようにも口を閉じようにも、亮の動きは全て制限されてしまい思うように動くことが出来ない。 『フェフの力ってのは便利だろ? 思っただけで物を動かせるんだ。おまえの口をこじ開けておくくらいわけはない』 「ぐ…っ、ん」 それを眺め下ろすライラックは興奮気味にぺろりと唇をしめらせると、亮ののど元までぐいとモノを突き入れてやる。 「――っ!! んぐぅっ!」 あまりの苦しさに、亮の大きな瞳から、生理的な涙がこぼれ落ちた。 『もっとも、普通の女でやったらすぐに潰して、最後は何とヤってるか、わけわかんなくなるんだけどな』 亮の髪をつかんだまま、ライラックは何度も腰を突き入れる。 その度に亮の舌が苦しげにもがき、吐き出そうと痙攣する喉がライラックのモノを締め付けた。 『よく湿らせとかないと、おまえがキツイんだぜ? ああ?』 「ぅぅっ、んっぅ…、っ、」 最大限まで力を解放し亮を押さえつけると、思うさま腰をゆらし始める。 『ふっは…っ…たまんねぇな、おい』 このセブンスで、まさかこんな無茶なプレーをしようとは、ライラックも最初は思ってはいなかった。 通常で考えれば、終わった後にガーネットに大目玉を食らい、今後数ヶ月はセブンス出入り禁止にされるのが落ちだ。 しかし、今朝会ったガーネットから「亮に関しては、多少の無茶も教育の内である」と思わぬお墨付きをもらってしまったのである。 何よりこの苦しそうに喘ぐ少年の顔を見て、ライラックの欲望は止まることが出来ないところまで来ていた。今ガーネットが怒鳴り込んできても、ライラックは構わず行為を続ける事だろう。 限界まで張り詰めさせたモノを亮の口から引き抜くと、泡だった唾液の白い糸が、亮の唇と己のモノを艶やかにつなぐ。 荒い息をつき、惚けたような瞳でぼんやりと虚空を見つめる亮の表情に、ライラックはゴクリと喉を鳴らした。 『エロい顔だなぁ、おまえ』 何も知らない幼い子供を無理矢理犯す――そんな禁忌の快感が、ライラックを支配する。 亮の腕を片手でつかむと、重力を無視したようにふわりと持ち上げ、そのままベッドへと放り投げる。 どさりと落とされた亮の身体に、ライラックはむしゃぶりつくようにのし掛かっていた。 シャツとズボンをはぎ取り、それでも暴れようとする亮の身体を舐め回す。 「っ、ゃっ、やめろっ、やぁあっ!」 一糸まとわぬ姿にネックブレスだけの格好は、まるで古代の隷奴を思い起こさせ、ライラックは己の中に凄まじい支配欲が溢れてくるのを感じ取っていた。 『ほら、もっとちゃんとしないとガーネットに言いつけるぞ、亮』 振り上げようとした亮の腕はシーツの海に押さえつけられ、ばたばたと動いていた足は、じんわりと広げられて、徐々に上へと上げられていく。 涙に濡れた黒い瞳で、亮がライラックの顔を睨みつけた。 しかし反抗心と怒りの中に、恐怖の影がちらついているのがわかる。 『たまんねぇ――。わかってそんな顔してんのかよ』 ライラックは亮の顔を見つめたまま、亮の幼いモノに舌を這わせていた。 「ぅっ、ん…や、やだっ、やぁっ」 亮のそこはまるで兆しを見せていない。 本気でこうされることを嫌がっていると言うことが、ライラックにもわかった。 しかし構わずそれを吸い上げ、刺激を与えてやる。 『おまえのミルクでおもてなししてくれるんだろ? あ? ほら、はやく出してみせなって』 「ぃゃぁっ、やっ、やだっ、ぁっ、ゃっ、」 亮は激しく首を振ると、身体をひねり、ライラックから逃れようと精一杯もがいた。 ライラックは舌打ちをすると顔を放し、亮の腰を抱え上げると、一気に亮の中へ突き立てていた。 ――ズグッ 肉の擦れ合う響きが、亮の中を突き抜ける。 「ぐっ――、!!」 突っ込んでしまえばおとなしくなるだろう。 ライラックはそう考えたのだ。 亮の中はきついが柔らかく、少し入れただけで歯の奥が疼くほどの快感に襲われていた。 しかし動きは止めず、熱く大きなモノで亮の内側を擦り上げ、奥へ奥へと腰を進める。 『っ、くぅ…、こりゃ…ヤバイわ』 声もなく身体を震わせ、歯を食いしばってその衝撃に耐える亮の表情に、ライラックはさらに自分のモノが大きく膨れあがっていくのを感じていた。 ――グンッ 「ぃぅっ――んっ、ゃっ、ゃっ、いやああああっ!!!」 一番奥までライラックが潜り込み、動きを止めたとき、亮は初めて声を上げる。 自分の上にのしかかる見知らぬ異国人のモノが、自分の中に押し入っている。 その事実を改めて確認し、恐怖と嫌悪がこみ上げてきたのだろう。 「ひっ、やぁっ、嫌だあっ!」 恐怖に目を見開き、めちゃくちゃに暴れる亮を押さえ込んだまま、ライラックは腰を動かし始めていた。 いくら暴れたところで、フェフの力で亮の身体はがっちりと固められてしまっている。 亮の抵抗はライラックの欲情を煽る道具にしかならない。 『っ、い、ぃいぜぇ、亮ぅっ、おら、もっと鳴いて、助けよべって、ぅっ、た、まんね――』 ライラックが突き入れる度、亮の奥にフェフの力が叩き付けられる。 その衝撃で亮の内臓は悲鳴を上げ、目の前が白く瞬く。 「ぃぎっ、んんっ、くぅっ、ぃぁっ、や…、はっ、シ…」 『ひひ――、ほら、続きだよ、っ、シ、なんだよ、あ? ほら、言えって』 「シ――ドぉ…」 揺すられながら亮の口から零れたその名前に、ライラックの興奮は頂点に達する。 亮の足を肩に担ぎ上げると、さらに深く亮の中をえぐってやる。 『っ、はっ、ヴェルミリオの女に、突っ込んで、やったぜ、ああ? っ、くっ…、とお、る…、もう、おまえは、ヴェルミリオのじゃ…、ねぇ』 「ぃっ、やっ、も、やぁっ、やだっ、やっ!!」 痛みと恐怖に必死にもがく亮の中に、ライラックは猛る己を突き立て、遂に数十度目でぶるりと身体を震わせる。 『っ、くっ――!!!』 埋めたモノがびくびくと痙攣し、ライラックは熱い迸りを亮の中にたっぷりと注ぎ込んでやった。 それを感じ取った瞬間、暴れていた亮の足が力なくぱたりと、ライラックの肩の上に落とされる。 壊れたように虚空を見つめる亮の頬をべろりと一舐めし、その身体を抱きしめてライラックが亮に囁きかける。 『もう、おまえは、俺らの、公共物…なんだぜ?』 ライラックは荒い息でそう言うと、再び亮の中で動き始めていた。 ノーヴィスが部屋に戻ると、ベッドの上でまだライラックが亮を揺すっている最中だった。 力なく抵抗する亮の細い手足が、宙を泳いでいるのが見える。 『ライラック様、あ、あの、もうお時間ですから!』 ノーヴィスがそう言うと初めてそこに彼がいたことに気づいたらしく、ライラックは舌打ちしながらもシャワーを浴びる事もなく、すぐに部屋を出て行った。 時間厳守。これはセブンスの大きなルールだ。 「と、亮さま……」 ベッドの上で身体を起こし、ぼんやりとしたまなこで足下のシーツをかき集める亮に、ノーヴィスはゆっくりと近づいていった。 亮が自分の視線から身体を隠そうとしているのだと気づく。 「亮さま、大丈夫ですから。私は、亮さまに何も出来ない身体ですから、ね?」 怖がらせないようになるべく優しい声で、なるべくゆっくりと、亮の身体に手を掛ける。 ビクン――と、亮の身体が強ばったのがわかった。 怯えた瞳でノーヴィスの顔を見上げると、萎えた手足で身体をじりじりといざらせる。 「亮さま――」 「ゃっ、ぃゃだ、ゃぁっ…」 よほど悲鳴をあげたのだろう。 呟く亮の声は痛々しいほどにかすれ、ノーヴィスは息を詰めた。 セブンスに配属されて、時折他の執事の代わりにゲボの世話を勤めることもあったが、ゲストの帰った後、こんな状態になった者を、ノーヴィスは一度も見たことがなかった。 それぞれ文句を言ったり、やたら不機嫌だったりしたことはたまにはあったが、それでもほとんどの場合楽しかったとのろけ話を聞かされることの方が多いのだ。 今のゲボは己の判断でゲストを取ることが出来るため、ゲボ達自身も疑似恋愛を楽しんでいる節がある。 しかし、今回の亮の場合、ゲストの許可をしたのは亮本人ではない。 そして何もわからぬまま、無理に身体を開かれたのだとすれば、こうなることも道理だとノーヴィスは思う。 ガーネットがどうしてこんな事を許したのか、ノーヴィスにはまるでわからなかった。 「さ、亮さま。もう大丈夫ですからね。お身体綺麗にしましょうね」 バスルームに連れて行くため、身体中に白濁液をまとわりつかせた亮の身体を抱き寄せる。 そんなノーヴィスの腕を逃れようと、亮は弱々しく抵抗した。 そこへ唐突に思わぬ来客がやってきたのだ。 その人物は扉を開け、すぐにベッドの上の亮を見つけると、大きな歩幅で近づいてくる。 「何ですかっ、その有様はっ!!」 亮の顔や足、腕にいくつも痣があるのを見つけ、その人物は亮を酷く叱責していた。 「が、ガーネット様!」 ゲボの個室までガーネットが直々にやってくることは少ない。 ましてやゲストを迎えた直後に来ることなど、前代未聞のことであった。 「ガーネット様、亮さまは今少しご混乱されていて――」 「あなたは黙っていなさいっ」 ガーネットに怒鳴られては、ノーヴィスが口を挟むことなどできない。 恐怖に怯える亮の身体をぎゅっと抱きしめたまま、下を向くしかない。 「トオル=ナリサカ。あなた、事もあろうに、ゲストの方に抵抗して見せたそうですね」 亮がぼんやりとした視線をガーネットへと向ける。 「いいですか? カラークラウンの方々をおもてなしすることも、重要な仕事の一つだと、昨日話しましたよね? あなたはそれができると言った。違いますか?」 次第に亮の意識がはっきりしてくるのを、ノーヴィスは感じ取っていた。 「これはあなたのためであると同時に、シド=クライヴの為でもあるのです」 「シ…ド?」 思わぬ名前の登場に、亮の瞳は完全に通常の色へと戻っていく。 「あなたを本部から隠していたあの男は、今とても危うい立場に立っています。いつ、キルリスト入りしてもおかしくない状況なのです。――ですが、あなたがきちんとゲボとしての責務を果たし、IICRの為に貢献するのであれば、私は『彼があなたをGMD中毒から解放するために、仕方なく治療していただけだ』と理事会に口添えしようと思っています」 「――。」 「それとも、あの男がキルリストに載っても構わないと、そうあなたは思っているのですか?」 「っ、嫌だっ! ……ぃや、です。ガーネット、様」 ガーネットの言葉に、半ば叫ぶように亮は答えていた。 亮の意識はもう完全にいつもの状態に戻っていた。 もうあそこに帰れないとわかっている。 それでも、帰る場所がなくなることが、亮には恐かった。 自分を必要だと、迎えに来てくれたシドがいなくなることが恐かった。 だから、亮は頷くしかない。 「ならば、与えられた仕事はきちんとこなしなさい」 「――はぃ……」 「今回は、フェフ・ライラックの広いお心で、それなりに楽しんでいただけたようですが、今後一切、ゲストの方にたてつく真似は許しません」 「はぃ……。も、しません」 「それから、顔や身体に痣を作るのも感心しません。それがゲストの意向である場合はある程度考慮しますが、ゲボは常に美しく、ゲストの目を楽しませるものでなくてはなりません。いいですね?」 「――はぃ、ガーネット様……」 亮が殊勝に頷く様子を眺め下ろすと、ガーネットはぶつぶつと小言を言いながらもやっと部屋を出て行った。 それを見送ると、亮は自分を抱きしめたままでいてくれたノーヴィスに向かい顔を上げる。 「ごめんね。オレのせいで、ノーヴィスも怒られちゃったな」 亮がそういって微笑むと、ノーヴィスは何度も首を振り、「いいえ、いいえ」と繰り返した。 「亮さまは悪くありません。亮さまは、いっこも悪くありません」 「──ひとつも、だよ、ノーヴィス」 亮が声を立てて笑ってみせると、ノーヴィスは照れたように微笑み返した。 「亮さま、今度こそ、ノーヴィスにご入浴のお手伝いをさせていただきますからね!」 フェフの力を叩き付けられ、自由がきかない亮の身体を抱き上げると、ノーヴィスがバスルームに向かう。 それでも「いいよ、だめだよ」と抵抗する亮の言葉をさらりと無視し、ノーヴィスは幸せそうに亮の世話を始めたのだった。 |